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8mmフィルムは非常に高価なものでした。3分半弱のフィルム1本の映像に数千円もかけて残した映像はご家庭にとっては家宝とも云うべきものです。その貴重な映像を現在のメディアに変換(テレシネ)するに当たって、価格やブランドのみで業者選定することがいかに危ういかをお伝へします。
弊社が長年研究・開発してきたテレシネ技術の解説です。業者の比較・決定の参考にご覧ください。

目次:
町のテレシネ屋の歴史(初期)・(現在)
フレーム・バイ・フレーム変換なのか?
ノン・スクリーン・プロセスなのか?
本格オーサリングをしているか?
変換領域と映写光源は?
町のテレシネ屋の歴史(初期)
VHSやベータビデオが 昭和50~51年 に実用化され、家庭用動画記録は急速に電子化の道をたどります。それとともに、今まで家庭で取り貯めた8mm映像は徐々にですが、いわゆる町の「テレシネ」屋でビデオ化されていきました。ただ、技術的にはきわめて貧弱なものでスクリーンや壁・スリガラスに映した映像を当時は高価だったビデオカメラで撮影しただけのものです。映写機器一式と、ビデオカメラがあれば、誰でも、変換ができました。しかし、このレベルでは、 フリッカ(映像の周期的チラツキ)を止めるのが精一杯で画質などはほとんど無視され、懐かしい8mmフィルム映像をテレビ画面で見られることだけで喜んでいました。電子化といっても、アナログ化であり、映像の加工も、編集もできない(出来るが画質は劣化する)ものです。
しかし、部屋を暗くして映写機からのスクリーン経由の暗い反射像を見る一種の「外照式」動画に比べ、TV画面と云う明るい「内照式 」動画に変換されたことで、満足していたのです。看板よりもネオンサインの方が綺麗ですし、近年のお葬式の遺影が「内照式」に変わりつつあることでもお分かりいただけると思います。こちらにマウスで歴史を表示します。⇒ テレシネ歴史1 テレシネ歴史

ビデオ・トランスファー 当時の資・機材:
左の写真は当時のビデオ変換機(トランスファー)で前面のスリガラスに8mm映写機の映像を結像させ、右側のクローズアップレンズ越しにスリガラスの結像を裏面よりビデオカメラで撮影するものです。結像や軸調整が簡単なため特別な技量・技術は必要ありません。
映写機の5枚羽根 右の写真はフリッカを減ずるための映写機の5枚羽根で本来の3枚羽根から改造した映写機を再生に使用します。これで常速(18コマ/秒)の再生でもフリッカはなくなります。
あとは カメラの映像出力をビデオデッキにつなぐか、DVDレコーダーが出た後もDVDデッキの画像端子に繋ぐだけの単純なものです。今でもこの程度の技術で変換業を営む業者もあるようです。

町のテレシネ屋の歴史(現在)
一方、一部の町のテレシネ屋はそれに飽き足らず、仕様・技術の向上・研鑽につとめ、光学系の改良、フレーム駆動系の開発、などを進め、切磋琢磨しておりました。が、この数年、それまで、この分野に入っていなかった大手の元フィルムメーカーやカメラチェーンなどが、かつてのブランド力ひっさげて大きくも無い市場に参入してきました。変換技術には何も触れず、その技術のほどは分かりかねますが、映像を繋いで一気に直接DVDに焼き付けることで、コストを比較的安く抑えていと推測されます。

ビデオ・トランスファー フレーム・バイ・フレーム変換なのか?
フレーム・バイ・フレーム変換はフィルムの一コマを正確にビデオ映像の1フレームに変換する方式です。したがって、映像内に二重写しのコマは発生しません。勿論チラツキもありません。しかし、8mmフィルムは1秒間に18コマ、ビデオは30フレーム(正確には29.97フレーム)で上映されますから、その比率分(30÷18)だけビデオ・フレームを増やす必要があります。右図はフレーム・バイ・フレーム変換を模式図で示したものです。フレーム・バイ・フレーム変換か否かはテレシネの技術で最も大きなファクターとなります。特にデータ変換などで一コマ一コマが確認できる環境ではその違いがあらわにあります。こちらにも解説があります。

シャッター・スピードは?
飛ぶ鳥も、豪速ピッチャーの球も高速なシャッタースピードで撮影すれば静止して写ります。実は映写機構そのものも機械である限り振動します。8mmフィルムの映像の横幅は6mm程度(レギュラーは5mm以下)で、たとえ10μ(ミクロン)の揺れでも像全体で見れば1/600ほど揺れることになります。現在のハイビジョンTVの横1,920ドットでは3ドットほどの揺れやボケとして現れます。この揺れの内、フィルムの送り機構に起因する揺れはフィルムの進行に周期した揺れでしょうから、その周期に連動した高速シャッターで変換すれば揺れを軽減できることになります。当社では現在1/1,000秒の高速シャッターとしております。1/10,000も可能ですが、シャッタースピードをあまり高速化すると焦点深度が浅くなり、フィルム像の中心と境界辺のと距離差でピンボケが部分的に起こります。現在は程よく両立させる1/1,000を採用しています。尚、スクリーン・プロセスの場合は、チラツキ防止の観点から1/30~1/100程度のスローシャッターとなるようです。

ノン・スクリーンプロセスなのか?
テレシネに於いて、スクリーンは像を歪める最大の敵となります。汚れやシワは勿論、生地自体の粗密や反射・透過も全て映像に直接影響します。一旦スクリーンに結像した実像の反射光か透過光を撮影するため、結像の不具合と撮影時の不具合が加算されることになります。一方のノン・スクリーンプロセス(スクリーンを使用しない)はフィルムからの映像光を直接(レンズは通す)CCDやCmosなどの撮像素子に結像させるため、減衰が少なく色抜けと良い変換が可能となります。スクリーン・プロセスとノン・スクリーン・プロセスとも更に細分化した技術の違いはありますが、ノン・スクリーン・プロセスであることが重要な決め手となります。こちらにも解説があります。

大手作成DVDとの差 本格的なオーサリングをしているか?
某大手ブランドの変換したものと、当社の変換したもものとを裏面(記録領域)で比較したものです。
あるお客様が某大手ブランドの変換がご不満で再変換を当社に依頼されたものです。40分程度の同じフィルムの変換比較です。使用されたDVDの記録領域は2倍以上違い(画質程度をあらわすビットレートが2倍以上違う)、画質に優劣があることを表しています。更に、お客様の希望された付加仕様も某大手ブランドでは対応しておりませんでした。直接DVDに変換する機械まかせのプロセスには明らかに限界があります。フィルム一本一本・DVD1枚1枚を常時監視しながら最適な製品に仕上げることが大切です。仕様や手法を慎重にしらべて業者を選定しましょう。ブランドのみで選択して先述のお客様のように後悔しませんように。

8mmフィルム・テレシネの領域 変換領域は十分に広いか?
8mm映写機の映写領域はフィルムに写っている映像の80%ほどです。これはカメラ自体が撮影の領域に個性(ムラ)があるからです。(位置決めのクローピンとアパチャーの位置関係やアパチャーの面積の相違)さらに、カメラの撮影枠(アパチャー)へのゴミの付着を見せないようにする工夫でもありました。世の中にあまたあるカメラの個性や汚れ具合を無視できる最大公約数的領域を映写するようにしていた為です。仮に1台のカメラに限定した映写機であればもっと広い領域を映写することが可能です。これはお客様がお持ちになっているフィルム毎に映写領域を調整しなければならないことを示しています。

映写光源は?
8mmフィルム隆盛時代の映写機の光源は3,400k(ケルビン:色温度)のハロゲンランプが主流でした。100wで部屋を暗くして幅60cmぐらいの像で見るのが一般的で、より大きく或いは鮮やかに見たければより強い光源のキセノン・ランプ映写機が必要でした。スクリーンに映った反射光を見るという「外光式」の原理から強い光源が求めらたのです。 スクリーン・プロセス法のテレシネでは同じ強光源が必要となります。
一方、ノン・スクリーン・プロセスでは直接太陽を覗き込むようなもので、逆に光源は1w程度と低く抑える必要があります。ハロゲンでは数十wのハロゲンに減光フィルターをかけるか、LEDを使用します。赤・青・緑の3色光を調合して3,400k(ハロゲン)にするのが筋ですが、フィルム自体が既に変色している(色調調整が必要な)ため、重要な要素とはなりません。全色を均等に含んだ「白色」=昼白色(5,000k)程度がよいと考えています。

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